上司からのパワハラでうつ病を発症する患者は、多いものです。
私自身も、大勢の前で叱責される、ことごとく私の仕事や私自身を否定されるなどのパワハラで、うつ病を発症しました。
今回は、上司からのパワハラに耐え、復職しながらうつ病を克服された「さぎのみやこ」さん(34歳・女性)の休職・復職体験談について、インタビューしてきました。
上司からのパワハラに苦しんでいる方、抑うつ状態に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
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休職のきっかけは、部署異動によるストレスと同僚の嫌がらせ
2011年2月 | 部署異動 |
2012年12月 | うつ病発症 |
2013年5月 | 休職 |
2013年6〜7月 | リハビリ出勤 |
2013年8月 | 復職 |
以下では、それぞれの期間を具体的にご説明します。
2011年2月 | 営業スタッフ3名が同時期に産休取得 穴埋め要因として経理から営業へ異動を命じられる |
2012年12月 | 「過労によるうつ病のため1カ月休職」と診断される |
2012年3月 | 社内で倒れ強制的に休職。しかし会社要請により、2週間後には出勤。 ※書類上では休職扱い |
2013年5月 | 医者による強い後押しで、1カ月の休職を取得 |
2013年6〜7月 | 更なる休職の必要性を示した診断書に、会社が不快感 週3回のリハビリ勤務をすることで合意 |
2013 年8月 | 復職(週5回のフルタイム勤務) |
現在 |
2011年2月、同時期に産休を取得する営業スタッフ3名の穴埋め要因として、仕事内容が全く違う営業に、経理から異動を命じられたことが全ての始まりでした。
慣れない仕事内容と3名分の仕事量。加えて、ベテラン社員からの嫌がらせ…。
負けず嫌いの性格も重なり、とにかくがむしゃらに働きました。
気が付いたら、仕事を片付けるために、早朝出勤は当たり前になっていました。
お昼も食べずに22時を過ぎている‥という毎日でしたね。
どれだけ残業しても、残業代は出ず、それも絶望感に拍車をかけました。
仕事とプライベートのバランスが崩れ、仕事だけの生活。
当時は、家と会社の往復で精いっぱいでした。
そんな日々を過ごしていたある日、 出勤するためにホームに立っていました。
その時、ふと線路に吸い込まれるような気持ちになり、「死にたい」と思ったんです。
今にもホームに飛び込みそうな自分が恐くなり、勇気を出して心療内科を受診しました。
診断は、「過労によるうつ病」。
先生に、「働き過ぎです、休みましょう。」と言われた瞬間、 堰を切ったように涙があふれました。
今思えば、当時は、通常時よりも10kg 以上痩せていました。
心身ともに限界だったのだと思います。
自分では、「休んで位はいけない」「頑張らなくては」という気持ちばかりが先行していました。
先生に「休みましょう。」と言っていただけけたことで、「私は休んでも良いんだ…」と、そこで初めて思えた気がします。
先生に背中を押されて、1ヶ月間の休職を決意しました。
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上司が診断書の受け取りを拒否、休職できず
医師からは、1ヶ月の休養は必須という診断書を出してもらい、会社に提出しました。
しかし、直属の上司がその診断書の受け取りを拒否。
「休職しなさい」という診断書は出ているのに、その後も泊まり込みの仕事を任されたり、残業をさせられました。
しかし、私の心と体は、限界でした。
私は社内で倒れ、強制的に休職することになります。
でも、さらに上司は休職を無視。
倒れてから2 週間後には、再度出勤命令がくだされ、会社に行くことになりました。
ですが、出社したものの、デスクに座っている事すら出来ず、涙が溢れて何も手につきません。
医師からの強い後押しがあり、この後、やっと1ヶ月の休職期間に入ることになります。
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休職中は、活字が読めなかった
休職中の過ごし方ですが、私の場合、テレビが観れなくなり、活字も読めなくなりました。
ただ、 唯一大丈夫だったのが「ラジオ」です。
起きたらラジオを付けて、日当たりの良い床に寝転がり、そこから雲を見て1日過ごしました。
日が落ちたら布団の中に入る‥そういう生活でしたね。
お風呂には、2~3日に一回入る程度でした。顔も洗っていませんでした。
復職を決めた頃からは、なるべく活字を見るようにしたり、外出時間を増やすようにしていましたね。
頑張りすぎず、無理のない範囲でやろうと努めました。
会社側からは、更なる休職はNGが。リハビリ期間で合意
1ヶ月間の休職期限が迫ってきたので、医者に再度診察をしてもらいました。
結果は、「休職期間の延長が必要」。
診断書を出してもらい、会社へ提出しました。
しかし、診断書に会社は不快感を示し、「これ以上休まれるのはちょっと‥」と言葉を濁します。
結局、週に3回会社に行くという「リハビリ期間」にすることで協議決定しました。
復職したのは、生きるためにお金が必要だったから
私が復職した最大の理由は、「生きるためにはお金が必要だから」です。
親に頼れない家庭環境のため、生きていくためにはどうしてもお金が必要でした。
なので、私の中で「退職」という選択肢はなかったんです。
では、なぜ転職という選択肢を選ばなかったのか。
結局、うつ病を治すには自分の考え方を変えるしかないと思ったからです。
過去と他人は変えられません。
どんな環境であっても、結局は自分の考え方を変えて適応していくしかないんです。
それなら、考え方を変える練習の場に、今いる会社を使わせてもらおうと思ったんですよね。
それで、同じ職場への復帰を決めました。
復職後、周囲にうつ病を理解してもらえないのが辛かった
復職後に辛かった思い出を挙げると、キリがありません。
でも、一番辛かったことは「周囲にうつ病を理解してもらえない」ことですね。
うつ病患者は、外傷がないので、その苦しみが周りの人から理解されづらいです。
会社に来ている状況を見て、周囲の人は「うつ病が完全に治った」と判断します。
メディアの影響で、「うつ病患者に頑張れと言ってはいけない」という知識を持っている人は多くいましたが、それ以外の言動にも、患者は相当傷付いています。
それを、もっと分かって欲しかったな‥と思いました。
復職して、自分の考え方を変えられた
復職してよかったのは、職場を「自分の考え方を変える練習の場」として使えたことです。
例えば、うつ病になる前の私は、仕事を断れない人間でした。
それを知ってか、部署を越えて仕事を頼まれることも多々あり、一人で仕事を抱え込んで残業してばかりでした。
しかし復職後は、できないことは「できない」と伝えられるようになりましたし、上司に相談したり、今までとは違ったアプローチをするようになったんです。
考え方の癖を治すのはとても難しいです。
いまだに仕事を抱えてしまう時もありますが、 働きながら、少しずつ自分の考え方の癖が変わっているように感じるんです。
同時に、うつ病も徐々に回復しているように感じています。
きっと転職していたら、自分の考え方の癖を意識することなく、また同じように働いていたでしょう。
うつ病を再発させないで済んだのは、今の職場で復職したからだと思っています。
人生を楽しむ余裕が出てきた!
復職当初は、会社も休みがちで、家と会社の往復で気力を使い果たしていました。
今でもまだ、仕事のストレス・気圧の変化に影響されやすく、薬に頼ってしまう事も月に1回程はあります。
でも、昨年ぐらいから休むことも減ったんです。
それも、「自分で何でもやらなきゃ」という考え方の癖を治せたおかげだと思っています。
誰かに頼ったり相談することで、働きやすく、生きやすくなりました。
うつ病発症以前のように、仕事の後に買い物やヨガを楽しむ生活を今後も続けていきたいです。
同じ職場で復職は、リスキー。無理しないことが肝心
さぎのみやこさんの例では、「パワハラ上司から何度も診断書の指示を無視される」が、最も大きな問題です。
労働契約法第5条では、会社に労働契約に付随する義務として、労働者の生命、身体等の安全を確保しつつ労働させるよう必要な配慮をしなければならない「安全配慮義務」を課しています。
労働者が、労働不能であり休養が必要としている医師の診断書を提出したのに、労働を強制し、病状が悪化したのなら、安全配慮義務違反として損害賠償義務が生じます。
なので、このように「診断書を無視する」会社に対しては、損害賠償請求をすることは十分に可能なんです。
それがまず問題点ですが、「うつ病のきっかけになった職場で、復職」の危険性についてお話します。
このような復職方法をした場合、多くの患者がうつ病を再発します。
さぎのみやこさんは、幸いにも自分の考え方の癖を変えることで適応されていました。
が、このような例はかなりレアケースです。
うつ病の原因が人によって違うように、治療法も人それぞれ違います。
「この人ができているんだから、私もできる」と、無理に自分を追い込まないようにしましょう。
ただ、誰かに強制されるのではなく「もう一度同じ職場に復帰したい。」とあなたが心から願うなら、飛び込んでみるのも良いでしょう。
復職してすぐは、自分の体が思ったように動かずもどかしいと思います。
会社を休みがちだったり、うつ病発症以前の自分と比較して自責的になったり。
でも、そんなリスキーな局面でも、うつ病を回復してきた人がいるんです。
だから、リスクが高いからといって自分の思いを曲げる必要はありません。
あなたが望む休職、復職の形を、いろんな体験談を見ながら探してください。
さぎのみやこさんの復職インタビューは、以上です(・∀・)
今後も休職から復職された、うつ病患者の方々のリアルな声をインタビューしていきます。乞うご期待!