水島広子「拒食症・過食症を対人関係療法で治す」のあらすじ・感想・レビュー・試し読み|過食嘔吐はがまんしなくていい

うつ病

親や配偶者などの「身近な他者」との対人関係を改善することでうつ病や摂食障害の治療に効果をあげ、欧米では標準的な治療法である「対人関係治療法」を紹介する、水島広子「拒食症・過食症を対人関係療法で治す」を読みました!

あらすじ、どんな人にオススメなのかなど、感想とともにがっつりご紹介します☺️✨

あらすじ


拒食症・過食症とは何か、そしてどう治療したら良いか のお話。

<あらすじ>
「対人関係療法」とは、数多くの臨床試験でうつ病や摂食障害への治療効果が検証されているユニークな治療法で、著者は日本での第一人者です。
病気の背後にある生きづらさや家族関係の問題を見ないで、表面的な症状だけを抑えても治らない。
摂食障害になったことをむしろ生かして、人生の質を高めてほしい、と著者は言います。

 

こんな人におすすめ

  • 拒食症・過食症で悩んでいる
  • 過激なダイエットに何度も挑戦して失敗している
  • 認知行動療法を試したが、合わなかった

 

感想

①痩せたい気持ちや過食嘔吐そのものについて、固執しない

摂食障害に悩む人に女性が圧倒的に多いのは、男性社会において女性が外見で評価されることが多いためです。
痩せたい、という気持ち自体は、この男性優位社会で生きる上で、なかなか取り除くのは難しいもの。
なので、痩せたいという気持ち自体は否定しなくていいと水島先生は話しておられます。
痩せたいという気持ちは誰しもが持っているけれど、その中でも摂食障害になってしまうのは全体の1〜3%ほどだけ。
病気になってしまうほど「痩せたい」と思い悩んでしまうのは、後述する理由のせいであって、それ自体は問題ではないのです。

また、過食嘔吐をしてしまうこと自体にも罪悪感を抱かなくていいと。
私は過食症なのですが、過食嘔吐をするたびに、「また耐えきれずにやってしまった」と落ち込んでいました。また懲りずに買ってしまった、食べてしまった、吐いてしまった…そう思うのに、過食のスイッチが入るともうそれ以外何も考えられなくて、そんな自分はどうしようもない浪費家で、自分をコントロールできない愚か者で、生きる価値がないと、毎回毎回ひどく自分を責めていました。
しかし、水島先生がおっしゃるには、過食嘔吐は患者のストレス対処法の一つであって、そのこと自体に一喜一憂する必要はないとのこと。患者の抱える問題が解決していけば、自然と過食嘔吐の回数は減っていくから、とのことでした。
たしかに、過食嘔吐すること自体を問題だと思わないように気をつけるようになってからは、過食嘔吐をしてもさほど自分を責めないようになりました。
過食嘔吐をしてしまった後はたしかに辛い気持ちになるのですが、それ自体は問題じゃないから、問題が解決すればいつか治るから、と前向きに考えられるようになりました。
それだけでも、死にたいほど辛い気持ちから随分解放されて、私は「この本を読んでよかった」と強く感じました。

 

②摂食障害の原因は、対人関係の不和・コミュニケーション不足

この本のメインとなる主張は、これです。
「摂食障害の原因は、対人関係の不和・コミュニケーション不足」。

拒食症の人も、過食症の人も、どちらもが食べない/食べる(食べて吐く)に走ってしまうのは、自分の大切な人との間で、自分の伝えたいことを伝えきれずに苦しんでいるから。その苦しみが限界に達して、自分のコントロールできる「食べる」ことで、その苦しみを晴らそうとしてしまうんですね。

私に関して言えば、父はほぼ育児放棄状態、母のワンオペという状況で育ちました。
父は自分が医者であることと高給取りであることを鼻にかけ、母を家政婦のように扱い、低学歴かつ職歴のほとんどない(出産・育児のため辞めざるを得なかった)彼女を侮蔑しており、母はそんな扱いを「仕方ない」と甘んじて受け入れていました。

私の下には弟と妹もいたのですが、弟は思春期に入ると私に対して「デブ」「ブス」と日常的に暴言を吐くようになり、父も母もそれを見て見ぬふり。その理由は推測するしかありませんが、両親は「自分たちの家庭には何も問題がない」と思い込みたかったのかもしれません。また、学歴第一主義の両親なので、常に学年トップという優秀な成績の弟には何も言えなかったのかもしれません。

弟がそうして私の外見について暴言を吐く中で、気弱な自分は何も言い返すことができませんでした。特に弟は手が出るタイプで、言い返せば殴られるかも、蹴られるかも、物を投げつけられるかもしれないと怖かったのもあります。
弟から毎日かけられる暴言へのストレスから、過食嘔吐を始めるようになりました。それは大学進学を機に家を出てからも変わらず、結局14歳で始めた過食嘔吐は35歳の今でもやめられずにいます。

私の場合は、弟の暴言について両親に助けてと言えなかったこと、弟に対して暴言をやめてと言えなかったこと、父が母や娘に対して女性蔑視的な言動を取ることをやめてほしいと言えなかったこと、両親が自分たち子供に学歴第一主義を押し付けるのをやめてほしいと言えなかったこと…などが、対人関係の不和・コミュニケーション不足であり、過食嘔吐の原因だったと思います。

ただ、今現在は両親とも弟とも離れて暮らしているし、積極的に会うつもりもないので、彼らとの対人関係の不和については「過去のこと」として忘れ去ってもいいのかなと思っています。これまではそれらを思い出しては苦しんで過食嘔吐に走っていたけれど、彼らは私の人生を苦しめるほどの重要な他者なのか?と改めて考えると、別にそうでもないなと思えたんです。

今現在の私が頭を悩ませていることは、夫の両親の存在。義両親の仕事を、夫は手伝っており、私も手伝わされているのですが、どんなに仕事を頑張っても薄給ですし、義両親はデリカシーがないので差別的な言葉(女だからこうすべき、自分の娘と比べてあんたは何もできない、顔がブサイク、太りすぎ…など)を平気で私に投げかけてくるんですね。仕事を手伝わされている以上、関わらないことができず、義両親の言葉にいつも傷ついては泣いてばかりいます。
とはいえ、これに関しても「義理の両親といえ近い関係性なのに優しくしてくれない」という期待を私が持っているから辛くなるのだろうと思います。
「どうしようもない差別的な人間」だと思って対応すれば、辛さは少し軽減するのかも。(本の中で、対人関係の不和は「役割の期待」から起こると書かれていました。相手にこうしてほしい、こうであってほしいと願うのにそれが叶わないから辛くなるのだということです)
嫌なことを言われた時には言い返したいけれど、言い返すだけの瞬発力は私には備わっていなくて…(そんな自分が嫌になるのですが)。なので、言い返せないのならば無視するとか、こいつには何を言っても仕方ないと諦めるとか、心を守るために義両親の存在を心の外に出してしまおうと思います。

 

③自分の心の健康を第一に考える

拒食症・過食症を解決するために最も重要なこと。それは、自分の心の健康を第一に考えること。

仕事のこと、お金のこと、家族のこと、友人のこと…私たちは日々いろんなことに心をすり減らされて、辛い気持ちになっていると思います。
でも、それらは一旦脇に置いて、まず自分の心の健康を最優先させるべきだと本には書かれていました。

たしかに、「健康でいないと、痩せないと」と運動を自分に課したり、食事制限を課したり、「仕事をしないと、お金を稼がないと」と嫌いな義両親のもとで耐えて仕事をしたり、「親孝行しないと、兄弟仲は良い方がいい」と嫌な思い出を抱いたまま両親や弟妹と仲良くしようと努めたり…そういう日常が普通なのだと思って苦しんできたけれど、もう何もかもを手放していいのかもしれないと思いました。
一度全部捨てて、一からやり直したいです。
自分の心が負担だと思っていることを捨てて、過食嘔吐を治す旅に出たいです。

 

まとめ

25歳の時、新卒で入った会社でパワハラ・セクハラ被害に遭い、うつ病になりました。
それから10年間、何度も希死念慮が高まって自殺を試みましたが、どうにか生きています。
とはいえ、14歳から始めた過食嘔吐はうつ病の症状がひどくなるほど悪化の一途を辿っていました。
主治医に相談しても、「うつ病に過食嘔吐はつきものだから」と真剣に取り合ってもらえず、私は一生過食嘔吐をし続けなければならないのかと絶望的な気持ちで毎日を過ごしていました。
過食嘔吐のことを考えるほど自分が惨めになるし、抑うつ傾向も強くなるのに、主治医は分かってくれない…。そう思うほど、主治医への信頼感もなくなり、ますます自分の殻に籠り、薬に依存し、自分が苦しいと思うことほど主治医にさえ相談できなくなっていました。

そんな時に、藁をも縋る思いで読み始めたのが本書です。
対人関係療法という言葉は初耳でしたが、うつ病や過食嘔吐の患者に効果があると言われる認知行動療法が自分には全く効かなかったため、別のアプローチはないかと探っていた矢先だったので、もし自分に合ったらいいなとわずかな希望を胸に読み始めました。

読んでみて思ったのは、具体的な治療方法についてはさほど書かれていなかったものの、どういう気持ちで過食嘔吐と向き合ったらいいのか、過食嘔吐の真の問題とは何か…といった、過食嘔吐に苦しむ患者の心を軽くするように、筆者が寄り添って書いてくれているな、ということでした。
それまで主治医にもまともに過食嘔吐のことについて取り合ってもらえず苦しかった気持ちが、本を読んでとても救われた気持ちになりました。

それに、自分の生まれつきの性格上、過食嘔吐になりやすいのだということも分かったし、過食嘔吐それ自体が問題なのではなく過食嘔吐をしてしまうくらい自分が人間関係で追い詰められていることが問題なのだということが分かったので、自分の身の回りの人間関係を考え直そうと建設的に物事を考えられるようになったのも良い点でした。
それまで、過食嘔吐を止めるにはただその過食嘔吐の衝動を我慢するしかない、痩せたい気持ちを消すしかないと思い込んでいたので、衝動に襲われている時にそんな理性的なことできないよと諦めモードだったんです。
こう考えれば過食嘔吐は治る、と道筋を示してもらえたことで、過食嘔吐をやめた自分の未来像がぼんやりとでも見えてきたことが、本当に嬉しかったです。

具体的な過食嘔吐の治療法については、同著者「やせ願望の精神病理:摂食障害からのメッセージ」に書かれているようなので、そちらも読んでいきたいと思います!変わっていく自分が楽しみです。

拒食症・過食症を対人関係療法で治す
作者:水島広子
日本では数少ない摂食障害(拒食症と過食症)の専門医が教える「新しい常識」。多くの誤解と偏見を正し、患者とその家族に治療のための正しい知識を提供する。併せて、親や配偶者などの「身近な他者」との対人関係を改善することでうつ病や摂食障害の治療に効果をあげ、欧米では標準的な治療法である「対人関係治療法」を紹介。

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