舞城王太郎「奈津川サーガ」シリーズを読みました!
登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨
登場人物とあらすじ
<あらすじ>
腕利きの救命外科医・奈津川四郎に凶報が届く。
連続主婦殴打生き埋め事件の被害者におふくろが?
故郷に戻った四郎を待つ血と暴力に彩られた凄絶なドラマ。
こんな人におすすめ
- 舞城王太郎作品が好き
- 福井を舞台にした作品を読んでみたい
- ドロドロの不倫や血みどろの殺人事件にワクワクする
ネタバレ感想
煙か土か食い物
福井県西暁町に住む代議士の一家・奈津川家4兄弟のうち、次男の二郎への父親による執拗な虐待と連続主婦殴打事件との関連がDNAのように絡み合って語られます。
特に二郎の人間とは思えない残虐性や知能の高さは目を見張るものがあり、理不尽な暴力だけをなぜか自分だけが与えられて育つと人間はこうなってしまうのだろうかと哀しみを覚えました。
最後に祖父を殺したのは父、父や母…奈津川の人々を殺そうとしたのは二郎の手先ということが判明するのですが、事件を紐解いていくとそこかしこに親からの愛を求める子の悲鳴が聞こえてくるようで辛かったです。
多くの人間を道連れにした、哀しい子供の復讐の物語でした。
暗闇の中で子供
嵐のような物語でした…。
今回の主人公は奈津川家三男の三郎。彼が道端で一目惚れした中三の少女がなぜかマネキンをバラバラにして埋めていたことをきっかけに、少女の恋人がバラバラ遺体になって発見されたり、三郎が少女に腹を切り裂かれたり、二郎だと思われていた河路夏朗が実は二郎の同級生の双子だったり…事件が息着く暇もなく次々勃発します。
一番気持ち悪かったのは、少女の恋人を含む複数人の異様な遺体の状態での連続殺人事件と、二郎がかつてヤンキーにさせた「犬にフェラをさせた挙句、ペニスを噛みちぎらせる」という事件の2つ。どちらも読みながら吐き気がしました。
二郎は両手両足を失ったけれど、奈津川の家のものとして生きていく覚悟を決めたようで清々しそうなラストでした。
まだまだ謎が多く残るお話なので、続編が読みたいなあ…。
作者:舞城王太郎
「おめえら全員これからどんどん酷い目に遭うんやぞ!」模倣犯(コピーキャット)/運命の少女(ファム・ファタル)/そして待ち受ける圧倒的救済(カタルシス)……。奈津川家きっての価値なし男(WASTE)にして三文ミステリ作家、奈津川三郎がまっしぐらにダイブする新たな地獄。
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まとめ
舞城王太郎作品はこのほかに「世界は密室でできている。」「スクール・アタック」を読んだんですが、まさか「土か煙か食い物」にルンババが登場するとは思いませんでした。そもそも、福井県西暁町で難事件起こりすぎですよねw
舞城さんの作品の中では本シリーズが一番読みやすいと感じました。他2作品は散文的というと文学的な表現になりますが、直接的に言えば「しっちゃかめっちゃか」「前後の意味が通じない」「キャラクターの行動原理が理解できない」、さらには「一人でノリツッコミする文章が一昔前のネット文章のノリでサムい」という印象でした。
本作ではそのサムさが抑えられて、キャラクターの過去に起こした時間や言動を丁寧に描くことで行動原理を観察的に分かりやすく説明してくれていました。
それに、舞城さんっぽいいわゆる「異常性の高い暴力の連鎖」がまざまざと描かれていたのも、振り切っている感じがもはや爽快でした。
読み終えてしまった今、なんだか喪失感を感じています。あの理不尽な暴力の嵐が懐かしいです。
カタルシスを感じたい時に読み返したいシリーズでした。