ジョゼ・サラマーゴ「白の闇」を読みました!
登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨
登場人物とあらすじ
<あらすじ>
ある男が、突然失明した。
それは原因不明のまま次々と周囲に伝染していき、事態を重く見た政府は感染患者を隔離しはじめる。
介助者のいない収容所のなかで人々は秩序を失い、やがて汚辱の世界にまみれていくが、そこにはたったひとりだけ目が見える女性が紛れ込んでいた…。
こんな人におすすめ
- コロナ禍を風刺したような物語を読みたい
- 獣に成り下がった人間が何をするのか、思考実験をしたい
- 突然目が見えなくなった後の世界を想像してみたい
ネタバレ感想
ある日突然、伝染病のように人々が盲目になっていった時、政府は一体どんな行動に出るのか?軍人は?突然政府によって収容された盲目の人々は?
人々の目が見えなくなり、政府が彼らに関与しなくなるとどうなるのか?暴力で支配された世界の中で人はどう生きていくのか?
「ある1人の男の目が突然見えなくなった」ことをきっかけに、次々と事件が巻き起こり、地獄のような出来事が当然のように勃発します。
読みながらそのおぞましさに何度も吐き気を覚えました。
それほどこの物語に登場する人々はリアルで、暴力的で、無秩序で、非道徳的で、悪意に満ちていて、でも時に驚くほど慈愛に満ちていて…いかにも人間らしい言動がまざまざと描かれています。
一番印象的なセリフは、主人公である医者の妻が物語の最後に言った「わたしたちは目が見えなくなったんじゃない。わたしたちは目が見えないのよ。目が見える、目の見えない人びと。でも、見ていない。」。
この言葉の意味を、読了後ずっと考え続けています。
ある日突然目が見えなくなった人々は、またある日突然目が見えるようになります。目が見えるようになったのに、医者の妻は「目が見える、でも見ていない」と言っています。医者の妻は皆が何を見ていないと言っているのか?人間の本質的な悪意、もしくは善意を見ていない、と言っているのでしょうか。正解は分かりません。
また、本作はコロナという未曾有の恐ろしい伝染病に苦しむ我々の日常を寓話的に示しているように感じられました。
コロナという目に見えない敵と戦う善意の人々もいれば、他人を精神的・肉体的な暴力で支配することでコロナへの不安をかきけそうとする純粋な悪意を持った人々もいます。それはまさに本作中で施設にぶち込まれた盲目の人々の戦いそのものであり、その類似性にはぞっとするほどでした。
コロナ禍の今こそ、人の本質は「見える」のかもしれません。本作を読み返して、もう一度自分には何が「見えているのに見ていない」のかを再考したいです。
まとめ
ある日突然、1人の男が盲目になったことをきっかけに国全体にその「盲目病」が広がるという物語です。
コロナが蔓延する今はまさにこの「盲目病」が蔓延した国家と同じ状態であり、小さな組織内(例えば反コロナワクチン接種団体など)では無政府状態となり暴力が人間を支配するような例も実際に見られています。
この寓話を読んで、コロナ禍で自分が今何を見るべきなのか、何を見られていないのかを私と一緒に考えてほしいです。読み終えた今もなお、私は自分が一体何を見られていないのかを探し続けています。