うつ病患者の皆さんは、「自分の正直な気持ち」を他人に話せますか?
私は26年間生きてきて、家族にさえ正直な気持ちを話せた記憶がありません。
いつも「相手から好かれるための仮面」を付けて生きていました。
「不安な時、辛い時、苦しい時、生身の人間に相談する。」
ただそれだけのことが、うつ病患者にとっては大きな壁です。
生身の人間に相談することが、どれほど安心感があり、生きていてよかったと思えるか。
今回は、私が抑うつ状態時、生まれて初めて他人に不安を吐露した時の体験をご紹介します。
「他人に自分の気持ちを言うのが怖い」という方の励ましになれば嬉しいです。
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自己評価の低いうつ病患者は、自分の話をしたがらない
うつ病になりやすい人の気質として、3種類がよく挙げられます。
循環気質、執着気質、メランコリー親和型気質です。
循環気質は双極性うつ病になりやすいタイプ。社交的ですが激昂しやすいです。
執着気質は、完璧主義で凝り性です。
二者択一的(白か黒か、ゼロか100かという結果を決めつけたがる)なので、優先順位をつけられず、ガクッと抑うつ状態になりやすいです。
メランコリー親和型気質は、他人との円滑な関係を保とうとするあまり、他人からの評価を気にしすぎます。
問題が起きると悲観的になり、すべて自分の責任だと抱え込んでしまいます。
それぞれ気質の傾向は違うものの、根本は同じです。
みんな、自己評価が低いのです。
自分に自信がないから、社交的に見せたり、完璧主義になったり、他人からの評価が気になるのです。
自己評価が低いと、他人に「本当の自分」を出せなくなります。
「こんなどうしようもない自分の話なんて、誰も聞きたくないだろう」と頭から決めつけて、ふさぎこんでしまうんですね。
本当の自分が思っていることを話すのを、うつ病患者が嫌がるのはこのためです。
私も「暗い話なんて、誰も聞きたくないだろう」と秘めてきた
私自身も、一度だって、家族に「本当の自分」で接することはできませんでした。
家族の求める娘を演じ、そのせいで病状は日に日に悪化。
恋人にも、「この人は明るい私をきっと求めているだろう」「どうしようもない私の暗い話なんて、どうせ面倒だと思うだろう」と決めつけて、話すことはありませんでした。
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「心配だ。もっと話して」と悲しまれて、始めて心が痛んだ
私は今、恋人と同棲しています。
毎日彼と一緒にいるのに、本心を話すことはありません。
でもある日、色んな思いを背負い込みすぎて、抑うつ状態がひどくなりベッドから動けなくなってしまったんです。
そんな私を見て「大丈夫?」「よかったら話して」と彼が言ってくれました。
私の両親も同じように言葉をかけてくれました。
でも、その言葉の裏には「心配掛けるなよ」「どうしてこんな風に育ててしまったんだ」‥そんな思いが見え隠れするようで、話せなかったんです。
それに比べて、彼は本当に心配だと思ってくれているように見えました。
「どうせこんな暗い話聞きたくないよ」「私の意見を拒絶したり否定する人ならこの関係は終わりだよ」「私さえ我慢すれば、この関係はきっと続けられる。我慢しないでいいの?」「幻滅されるかも」
そんな言葉が頭の中を駆け巡ります。
でも、もういいやと思ったんです。
体の中に悲しみと涙がいっぱいで、外に出さないと膨張して死んでしまうように思えたから。
これでダメなら、一生一緒にいる人じゃないからもういい、と捨て鉢な気持ちになりました。
自分が苦しいと思っていること、なぜそんな気持ちになるのか、それを何十分もかけて話しました。
話の途中で何度も泣いたし、感情的になって何を言っているのか自分でも分からないこともありました。
でも、彼はずっと話を聞いてくれて、私の考えや思いを否定しませんでした。
私が話し終えた後、彼はぽつりと言葉を漏らしました。
「話してくれて、ありがとう」
「君が苦しんでいるのが心配だった。これからは辛いと思ったらすぐに話してほしい」
私にとって、これは驚きでした。
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自分が苦しむことで、私を愛する人を悲しめてしまうんだ‥
私は今まで「自分だけが我慢すれば、周りはみんな幸せでいられる」と思っていました。
でも、違うんだ。
私が苦しむことで、私の愛する人を傷つけてしまうこともあるんだ。
自分だけが傷つけばいいんだと思っていた私にとって、これは大きな驚きでした。
あれこれ試してもダメだったのに‥話すと急に、心がすっと軽くなった
抑うつ状態が重くなった時、私はいつも一人でどうにか改善させようと奮闘していました。
体を動かそうとしたり、光を浴びようと努めたり、食事を変えたり。
もちろんそういった努力は必要だと思います。
でも、「まずそういう自助努力をしないと、誰かに相談できない」と思うのは間違いだとわかりました。
「辛いから今頑張っている」「助けてほしい」と周りに言ってもいいんです。
辛い、苦しいとリアルタイムで相談することは悪いことじゃありません。
むしろ、苦しみを感じている「今」を共有する方が、あなたを愛する人にとっては嬉しいのです。
なぜなら、あとから「あの時辛かった」なんて言われても、自分は何も助けになってあげられなかった‥と悲しくなるから。
「この人にとって自分は、相談に値する人じゃないのだろうか」とがっかりするから。
愛しているからこそ、相談する。
その考えを心に持っておきましょう。
話す相手は「あなたを否定せず、聞き役に徹してくれる人」を選ぼう
相談する相手は、お互いに愛し合っていると思える人を選びましょう。
家族や恋人、信頼できる友人などです。
もしそこであなたの意見を否定したり、あなたの話を聞いてくれないなら、その人は本当にあなたを愛してはいないのです。
あなたはそこで抑うつ状態を更に深めることになるかもしれません。
ですが、もし相談の結果あなたが傷ついたとしても、傷ついたあなたに追い打ちをかける人は、あなたにふさわしい人ではありません。
それが分かっただけでも、収穫です。
一歩踏み出した自分を、褒めてあげましょう。
「よくやった」「誰かを愛そうと努力した」と、自分をよしよししてあげましょう。
自分を褒めるのは気恥ずかしいなら、私があなたの代わりに褒めてあげます。
よく頑張りました。
相手から拒絶される、関係が壊れる不安を押し殺して、よくぞ前進しましたね。
あなたは胸が張り裂ける思いで、不安を吐露したでしょう。
相談した相手がもしあなたを否定しても、拒絶しても、私はあなたの踏み出した一歩を尊く思います。
「自分がこんな重い相談したから、相手が離れたんだ」なんて、絶対に自分を責めないで。
本当にあなたを愛している人なら、あなたがつらい時に、どんなことだってしてあげたいと思うはずです。
あなたが傷ついているなら抱きしめたいと思うし、
少しでも早く治してあげたい、自分が代われるものなら代わってあげたい、と涙さえこぼすでしょう。
あなたが不安を口にしたことは、あなたが新たな自分になる一歩です。
大いなる勇気の結果です。
どうか自分を責めないで。辛くなったら、どんどん口に出しましょう。
あなたの愛する人のために、あなたのために。